センターからのお知らせ

第23回(2023年度第7回)オンライン観光創造フォーラム開催のお知らせ(終了)

観光学高等研究センターは、8月23日(水)に 第23回オンライン観光創造フォーラムを開催いたします。どなたでもご参加いただけます。奮ってご参加ください。

 

樺太観光を再考する:植民地におけるモノと人のネットワーク

  • 趣 旨:
    近年、歴史学の分野から「帝国日本」における観光の研究が蓄積されるようになり、植民地イメージの形成に留まらない、さまざまな政治的・文化的役割を観光が担ってきたことが、実証的に明らかになりつつある。また、植民地研究における「人の移動」論は、内地/外地という区分を超えた帝国日本における多様な人流やネットワークの形成過程を明らかにしてきた。「人」に加えて、近年のアクターネットワーク理論の隆盛まで視野に入れると、さまざまな「モノ」の流入がもたらす植民地内部でのネットワーク形成にも目を向ける必要があろう。
    一方でその植民地的性質の差異ゆえか、以上のような研究的潮流は、樺太を対象とした研究ではまだ充分な蓄積が存在しない。そこで本フォーラムでは、帝国日本における観光の役割を整理した上で、樺太を事例にしてどのような考察が可能であるか、その一端を示しつつ、樺太「開発」における観光の役割についての議論を深化させる手掛かりとしたい。
  • 共 催: 観光学高等研究センター
         メディア・ツーリズム研究センター
  • 日 時: 2023年8月23日(水)13:30~15:30
  • 会 場: オンライン(Zoomウェビナー)
  • 参加費: 無料(事前申込制)
  • 定 員: 50名程度 先着順

  • 内 容:

■報告者: 平井 健文(北海道教育大学)

「帝国日本における観光の役割の再検討:近年の研究を踏まえて」
本報告は、シンポジウム、ひいては今回の研究プロジェクトを進めるにあたっての基盤的な知見を提供したい。その趣旨は以下の2点に大分できる。第一に、歴史学の分野における大日本帝国期の観光に関する研究動向を整理して、その到達点と課題を示すことである。この作業を通して、「楽しみのための旅行」という一般的な定義を超えて、往時の観光が担った政治的・文化的役割を明らかにすることが可能になる。第二に、これは上述の「課題」に関連することであるが、植民地としての樺太の特異性についての議論を整理することで、既往の研究をいかに問い直すことが可能であるかを検討することである。植民地としての樺太は、領有権の変化に伴うドラスティックな人口移動、つまり「移住型植民地」としての性質を持つに至った。こうした地域における観光開発を捉え直すことで、人とモノの流入に伴うネットワーク形成の過程を焦点化し、既往研究の課題をどのように引き受けられるかを検討したい。

■報告者: 李 俊榮(北海道大学・漢陽大学校)

「朝鮮から樺太に渡ったモノ:朝鮮料理屋と朝鮮焼酎を事例に」
1920年代、沿海州、ロシアの極東地方、北サハリンなどの地域から朝鮮人が樺太に移住した。彼らは自然に樺太「開発」に参加することとなった。樺太に移住した朝鮮人資本家の場合は、料理屋を運営する者が多く、それに伴って朝鮮人酌婦の数も急増した。樺太庁警察部は朝鮮人酌婦の存在は樺太在住朝鮮人の統制を困難にすると判断し、朝鮮人酌婦に対する「絶滅策」を行なったのである。しかし、樺太における料理屋や酌婦の数は、その地域の経済状況のバロメーターと言われただけに、朝鮮料理屋の繁盛を樺太「開発」とも結び付けることができる。また、朝鮮料理屋と朝鮮人酌婦は樺太で経験できる異様な風景の一部として樺太観光を創り出していた。
1930年代、樺太「開発」に従事していた男性労働者は不況につれて廉価の朝鮮焼酎を好み、やがては樺太における飲酒市場の半分を朝鮮焼酎が占めることになった。一方、樺太の酒造場では「島産愛用」というスローガンを掲げながら、朝鮮焼酎の樺太移入を拒むことで島産清酒を振興させようとした。さらに、島産清酒をはじめとする島産品を内地に紹介・販売するため、東京に樺太物産斡旋所が置かれた。「島産愛用」は内地に対する樺太認識を深める手段として機能を拡大したのである。
朝鮮から樺太に渡ったモノは樺太「開発」に様々な形で影響を与えていた。こうした事例を踏まえつつ、外地と外地(樺太と朝鮮)を繋げて樺太「開発」と観光を考えてみたい。

■コメンテーター: 池田 貴夫(北海道博物館)

■コメンテーター: パイチャゼ・スヴェトラナ(北海道大学)

  • 申込方法:
    下記フォームよりご登録ください。申込締切は2023年8月22日(火)です。
    https://us06web.zoom.us/webinar/register/WN_m5jXCg69TV6u7VVXTFbPzQ

  • お問い合わせ先:
    北海道大学 観光学高等研究センター online-forum(at)cats.hokudai.ac.jp
     *(at)部分を@に置き換えてご送信ください。
     *タイトルに「観光創造フォーラムについて」とご記載ください。