スペイン・バルセロナ市から、観光行政の担当者と研究者をお招きし、デスティネーション・マネジメントに関するシンポジウムを開催しました。
バルセロナ市観光戦略部長のオリオル・アンゲラ氏からは、バルセロナ市が2015年に策定した「観光戦略2020」で実質的な旅行者数の成長を抑制する政策の導入を進めた理由と実際の施策について講演いただきました。特に、観光振興の政策評価を旅行者と市民という2つの視点から行うことの重要性を指摘され、近年はオーバーツーリズムの深刻化から、特にバルセロナ市民の観光に対する意識変化に行政機関が関心を払っていることを強調されていました。
また、バルセロナ大学ホテル・観光学院のオリオル・アンゲラ・トレル氏は、無計画かつ急速な観光開発が街の商業構造を変化させ、結果的に住民が退去し街が空洞化するという「観光ジェントリフィケーション」についての研究を発表いただきました。バルセロナ市における実証研究の結果、バルセロナ市では観光開発によってレンタカー、宝飾店、バーなどが増え、一方で魚屋、理髪店、パン屋といった市民生活における重要な商業が衰退したことが明らかになっているとの内容でした。こうした街の変化がオーバーツーリズムの要因の1つであるとの指摘は、北海道のデスティネーション・マネジメントを考える上で極めて重要な示唆を与えるものでした。