研究スタッフ等

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専任教員&スタッフ

大交流時代の到来、観光が世界を変える
 私は10年ほど前に、2010年代のアジアで観光ビッグバンが発生すると予測した。2001年に米国で発生した同時多発テロ、その後のアフガニスタン戦争、イラク戦争、SARS、鳥インフルエンザ、インド洋大津波など、外国旅行の阻害要因が頻発しているが、外国旅行者の数は増加しており、観光ビックパンは確実に起こりうる可能性が高い。
 中国をはじめとするアジア諸国における経済発展、アジアの諸都市における巨大空港建設、エアバス社の超大型ジエット旅客機の就航などで、アジアを中心にして、大交流時代が到来している。開発途上国だけでなく、先進諸国においても、観光は国家的課題としての重要性を担っている。観光はまさにグローバルフォース(世界を変える力)として重要な役割を果たしつつある。
 グローバルな視野のもとで、文化多様性の時代における国際観光、文化的安全保障としての国際観光、地域住民が主体となった内発的観光開発、先住民族や少数民族によるエスニック・ツーリズム、開発途上国における観光分野の国際協力など、21世紀型の新しい観光の創造が世界的に求められている。観光創造に貢献する新しい総合的な観光学の確立を図るとともに、さまざまな分野で活躍できる優秀な人材の輩出を図りたい。
  石森秀三
石森 秀三 Shuzo Ishimori
担当分野/観光文明論,国際観光開発論
  前国立民族学博物館教授(文化資源研究センター長)。2006年4月に北海道大学観光学高等研究センター長に就任。小泉内閣の観光立国懇談会委員として日本の観光立国政策を理論的に支える。観光革命、観光ビッグバン、白律的観光、文明の磁力など、新しいコンセプトを提唱し、EI本における総合的な観光研究をリードする。
 

自律的な地域への道、エコツーリズムからの実践
 これからの観光として期待されて登場したエコツーリズム。それは「与える負荷を最小限に抑えながら自然環境を体験し、観光地に対して何らかの利益や貢献のある観光」で、いわば観光における「イノベーション」である。
エコツーリズムでは観光客が地域と深くかかわるので、そこにさまざまな相互変容が起きる。このダイナミックな観光を素材にして、地域と観光の関係を考察している。
 最近の関心は、地域が自律的にエコツーリズムを生み出すプロセスを解明し、そこから自律的な観光や自律的地域マネジメント実現の仕組みを解明してゆくことだ。それをモデル化することで、他の地域でも活用可能な示唆を見いだしたい。それが創造的で持続可能な地域の実現につながる。
 修士・博士課程では、実践に重きを置いたフィールドワーク主体の研究を目指す。そのために、在学中に実際にエコツーリズムや地域マネジメントが進められている現場に出かけ、地域のアクターたちとの交流の中で学びを進める。もちろん基礎知識も事前に十分学習した上で、成果の表現としての研究発表やプレゼンテーションでも腕を磨く。
 地域マネジメント研究で何よりも重要なことは「地域」の視点である。地域にこそ事実や知恵があるという思いが大切である。地域での実践と協働の中で、エコツーリズムや自律的な地域のマネジメント研究を楽しむことができる学生との、ダイナミックで創造的な協働を期待している。
  敷田麻実
敷田 麻実 Asami Shikida
担当分野/観光地域マネジメント論
サスティナブル・ツーリズム論
 

金沢大学大学院社会環境科学研究科博士課程修了。博士(学術)。金沢工業大学情報フロンティア学部教授を経て、2007年4月より北海道大学観光学高等研究センター教授。研究テーマはエコツーリズムと地域マネジメント。地域の自律的なマネジメントをテーマに、観光におけるイノベーションであるエコツーリズムの実現プロセスや、観光による地域創造の実践的な分析を進めている。

敷田麻実ホームページ

 

遺産創造という発想の転換と価値創出への挑戦

 「現代社会は果たして、未来の遺産を創出できているか?」これが私の問題意識である。
 「世界遺産」も、身近な「おたから」も、価値の本質に優劣はない。そして「遺産」は、いつの時代にもつねに創造され続けてきたものであった。自然遺産であれ文化遺産であれ、「遺産=ヘリテージ」とは、単に「祖先から遺された財産=モノ」を指す静的概念ではなく、「子孫に資産=モノ・コトを価値としていかに遺すか」を問う動的概念である。
 では、将来の遺産をいかにして創り出すのか? まずは、与えられた大切な遺産を真正=オーセンティックに継承することから始めねばならない。そしてそれらを真摯に見つめることで豊かな感性と価値理解の能力が育まれ、そこから、将来世代がさらに未来に伝えたくなる新たな価値の創造が可能となる。
 こうして現代の我々はもとより、将来世代が価値を創造し、さらにそれらを遺産として未来世代へ継承する営みが、私の考える「遺産創造」である。
 地域や社会が、本質的な意味で観光の発展を目指そうとすれば、自らが有する遺産の価値とその活用可能性=ポテンシャルを正しく認識し、その魅力を源に新たな遺産を創造していけるような個性的で誇りある将来ビジョンを描かねばならない。それには、遺産創造の主体となるべき民(市民)・産(民間)・官(行政)が、「遺したい資産」として「遺産」への発想の転換をはかり、それら多様な「遺産」の真正な価値を説明できる専門家を養成し、そしてこれら民・産・官・学の連携をコーディネートできる別次元の専門家を生み出す必要がある。
 地域をまたぎ、国を超えて活躍できるそうした専門家や、地域に寄り添って美しい国づくりの草の根を支える専門家を世に送り出していきたい。観光の創造とは価値の創造に他ならない、と私は考えるからである。

  西山徳明

西山 徳明 Noriaki Nishiyama
担当分野/文化資源マネジメント論

遺産創造論

 

1961年福岡市生まれ。京都大学工学部建築学科卒。京都大学博士(工学)。九州芸術工科大学・九州大学教授を経て現職。歴史的集落・町並み保存、ツーリズム開発、文化遺産まちづくり/国際協力(ヨルダン、フィジー)、鳴砂保護など、国内外で地域還元型フィールド研究を展開。

 

観光を切り口にした地域の新しいベンチャーを創造
 ものづくりにこだわって約30年間、機械産業、半導体産業、ソフトウエア産業のなかで、つねに日本と海外との間を行き来しながらビジネスをしてきました。そのなかで日本の素晴らしさ、住みやすさ、食の多様性、安全などを痛感しました。その大事な資源がうまく使われていないだけでなく、衰退していく現実を憂えています。
 一方、ものづくり大国としての日本の限界や、豊かな国のモデルはどうあるべきかという思いにとらわれてきました。その中で見つけた答えの一つの方向性が北大の観光創造にあります。観光を切り口とした地域づくり、国づくり、暮らしのあり方、その中でのレジャー・旅のあり方を考える観光創造です。
 単なる思いつきのアイデアではなく、地域の暮らし、日本人の生活に根付いた地域発のビジネスのあり方、それを可能とするようなモデル、新しい制度設計、地域と都市との新しい結びつき。これらが関心のあるテーマです。具体的には、観光を切り口にした地域ならではのベンチャー創造、地域の生業(なりわい)づくりが重要です。これらの実現のためには、地域課題の理解だけでなく、大資本の論理や都市の抱える諸課題の理解も必要です。そのうえで、大資本ならびに都市との協業・連携を考える必要な場合があります。
 「農業の6次産業化」が叫ばれますが、観光にも6次産業化の考え方がありえます。マーケティングやベンチャー・マネジメントという切り口を含めて、地域のNPOやスモールビジネスをどのように立ち上げていくのか、それが永続的に地域振興にどのように貢献していけるのかについて研究と実践を重ねていきます。
 日本だけに視野を置くのではなく、アジアの中、世界の中の北海道、さらにそれぞれの地域という視点で、大きな夢を描きながら、一歩ずつ研究と社会活動を続けていきたいと考えています。会社の発展,学問の発展と目的は相違しても、その先にある「我が国の発展や人の幸せの追求」というところでは一致しているはずです。双方の得意分野を融合させて我が国の発展のため智恵を出し合いましょう。
  臼井冬彦
臼井 冬彦 Fuyuhiko Usui
担当分野/観光ベンチャー論
  京都大学法学部卒業後、21年間クボタに在籍。農業機械部門、新規事業関連部門に従事。その間、ワシントン大学の経営大学院にてMBA取得。シリコンバレーに駐在し、戦略提携、投資活動、ベンチャー立ち上げに参画。後に、半導体企業C-Cube Microsystems,機械設計ソフト企業SolidWorksの日本法人CEO。2009年に北海道大学大学院観光創造専攻を修了し、神戸夙川学院大学の産官学地域連携センター長。2010年4月に北海道大学観光学高等研究センター特任教授に就任。
 

地域活性化の切り札は観光創造!
  私が観光学高等研究センターの産学連携シニアオフィサーに就任したのは,地域の活性化は観光創造を基軸にした多種多様な地域の光を創造することから成り得,それにより,そこに住む人々・訪れる人々の満面の笑顔が見えると確信したからである。
観光創造の究極は人の幸せに結実するという「次世代ツーリズムの創造研究」推進のため,これまで,東京オフィスや交流プラザ「エルムの森」の設置,北大初の公認グッズの制作,北海道大学連合同窓会の結成,学生支援の北大クレジットカードの導入,認可保育園の学内設置,日米包括経済協議業務等,北海道大学の将来を見据えた新規事項を数多く手掛けてきた経験と実績で,我が国の地域活性化のめに学問分野と地域,産業界との橋渡しを担いたいと考えております。
観光を取り巻く産業の裾野は広く運輸,宿泊,通信,販売,製造,加工,印刷,広報,ガイド,サービス,土木建築,不動産,コンサルティング,金融等々多様で人の動くところに資金が投入され,新産業が生まれるという循環を繰り返します。
観光は,マスツーリスム(旅行会社や観光関連企業などが主導の名所旧跡や景勝地を巡る観光)やニューツーリズム(主に個人を中心にした自律的な体験型,交流型観光)という視点だけではなく,日本の地域の魅力を再発見し新しい観光を創造することが我が国発展に欠かせない視点だと考えています。 
産業界の皆さん,お気軽に私をお訪ねください。皆様方それぞれ会社の発展,学問の発展と目的は相違しても,その先にある「我が国の発展や人の幸せの追求」というところでは一致しているはずです。双方の得意分野を融合させて我が国の発展のため智恵を出し合いましょう。
  南俊夫
南俊夫 Toshio Minami
担当分野/産学連携
  前北海道大学企画部次長。2009年4月に北海道大学観光学高等研究センターの特定専門職員に就任。産学連携シニアオフィサーとして,新しい切り口で観光創造研究にアプローチしている研究者・大学院生や地域活性化の企画を支える。観光を基軸にした地域発展の民産官学連携の窓口。
 

「地域ブランド」、地域を光り輝かせる
 地域ブランドとは何だろう。地域独自の特産品や観光施設をつくることは特に真新しいことではない。一村一品や地域CI、各地のリゾート構想の動きも記憶に新しい。しかし、地域ブランドの本質がそれらと異なるのは、地域の内部と外部に同時に目配せするブランド化という現象に注目する点だ。
 地域ブランドは多様である。あえて定義づけるなら「地域の価値が地域内生活者、関連組織に共有され、それが地域外に発信され、定着することで構築されるもの」となる。よって、何かを創っただけ、何かを消費者に訴えただけ、ではブランドにまで育ちにくい。地域の内外にあまねく浸透することが必要だ。ちなみに、地域の価値とは、景観・白然環境・歴史的風景、あるいは文化・風土・特産品など、地域に存在する多様なものが、固有の資源・資産と結びついたものを指す。
 現在、地域企業の経営戦略やマーケティングの研究と、産業クラスターや産学連携に関する研究とを、並行的に進めている。地域ブランドの議論にはミクロとマクロの視点が複雑に絡み合っている。地域をとりまく課題に横断的に取り組みつつ、実践志向の研究成果を創出することを目指したい。
 この分野にはまだまだ研究の蓄積が少ない。それだけに困難も多いがやり甲斐もある。新しく北大に生まれた観光創造専攻で、地域を光り輝く存在にしたいと願う大学院生・社会人たちと共に、わくわくしながら真剣に学んでいける日を心待ちにしている。
  内田純一
内田 純一 Junichi Uchida
担当分野/地域戦略論
観光地域マーケティング論
  博士(国際広報メディア)北海道大学。AFLAC勤務を経て北大助手に転じ、2007年4月より観光学高等研究センター准教授。観光・地域に関わる経営学が専門。著書に『地域イノベーション戦略:ブランディング・アプローチ』(芙蓉書房出版)ほか。 内田純一ホームページ
 

旅。この神聖なるもの
 脳細胞どうしが接続し回路が形成されていくように、魂はつねに相互にネットワーキングを試みる。これが旅という行為である。あるときは過去の魂との共鳴を求め、またあるときは芸術作品を見て作者と語らおうとする。
 野山に出て人以外の生命との触れ合いを求めたり、神の存在を求め巡礼に出たりする。そしてその結果として人は感動や恐怖・畏敬の念といったものを抱く。つまり旅とは人間にとって極めて神聖な文化的・精神的営為なのである。これはコミュニケーションとしての観光の本質であり、この意味において観光は思想としての芸術と同義である。
 一方、本邦のこれまでの観光学は企業経営の視点に大きく偏ったものであった。また「観光」という言葉も、「光」を「観る」「示す」面のみがスローガンのように強調され続け、思想としての「易経」本来の風地観の意は忘れ去られている。もちろんこうした姿勢も重要ではあるが、それが全てであるかのような風潮は危険であり、人間の文化としての「旅」の本質を見失わせる。
 私はより美学的・芸術的問題として、すなわち魂の問題として、観光を見直そうと思う。これはつねに外側へと向かうベクトルで展開されてきた本邦の観光研究に対するアンチテーゼとしての内向きベクトルの提示であり、思想・哲学としての観光学創造の試みである。創造には破壊が伴う。芸術・文化に携わる人々、とくに若手芸術家の皆さん、学生諸君とともに、既存の学問体系を打ち壊していきたい。
  山村高淑
山村 高淑 Takayoshi Yamamura
担当分野/文化資源論
ヘリテージ・ツーリズム論
  北海道大学農学部卒、東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。工学博士。シンクタンク研究員、京都嵯峨芸術大学観光デザイン学科助教授を経て、2007年4月より観光学高等研究センター准教授。中国を中心に、世界遺産都市・集落の観光地化とその社会文化的影響、観光芸術の創造過程などについて幅広い研究活動を展開。雲南省麗江に関する著書・論文多数。
 

ヘリテージ・ツーリズムの創造。各セクターの協働から
 「地域課題の解決」。常にこれを研究活動の原動力とし、地域の構成原理を読み解き、現代を直視し、将来を描き、それに対応した仕組みづくりに取り組んでいる。
 まち、むら、しま・・それぞれには生活を営む人々がおり、地域が経ている歴史の1ページを描き、子や孫を育て、また次の歴史をつないでいく流れがある。その構成原理を読み解くため、地域を総体で捉え、環境や歴史によって培われた地域の物語りをもとに体系化した地域の文化遺産を明らかにする。そして、その地域の遺産を継承した人が日々の生活のなかでどう関係性を形成するのか。そして将来、継承する人が引き継ぎたいと望む仕組みづくりに取り組んでいる。
 その現代の方法論として、ヘリテージ・ツーリズムを適用した持続可能な地域経営のシステム構築ができるのではと考えている。地域を訪れる人や地域を応援する人を、ある時は無意識ではあるが否応なく、ある時は積極的な好奇心への対応、とさまざまなアプローチにより文化遺産を介して地域経営に取り込める仕組みとして、また地域内の様々な生業、産業、文化といった活動等をつなぐ仕組みとして研究を深めていきたい。
 これは、多様な価値観と活動を行う人々による目的意識の共有化といった現代の国際社会の運営においても重要な課題であるといえる。ここ観光学高等研究センターは、教育機関でもある観光創造学専攻を含めて、研究者、院生、関係スタッフ、連携する様々な機関や地域の多様さとそれらを連携するシステムは、まさにそれを「地」で行っている機関であると言える。その機関を最大限に活かしながら、活動を行っていきたい。
  池ノ上真一

池ノ上 真一 Shinichi Ikenoue
担当分野/地域計画論

ソーシャル・キャピタル論

 

大阪・堺出身。「技術の人間化」を理念とする芸術工学を学び、現在は、都市・地域計画・まちづくりを専門。
前職は特定非営利活動法人たきどぅん(竹富島)、(財)日本ナショナルトラスト(東京都)と、NPO・NGO職員として文化遺産マネジメントに取り組む。沖縄・竹富島、岐阜・白川郷、東京・旧安田楠雄邸、鳴砂の浜(全国)、その他、「地域遺産」と「ヘリテージ・ツーリズム」をキーワードとした社会システムの構築等に取り組む。

 

 観光開発は地域開発の有効な一手段である。しかしそれは、諸刃の剣でもある。

 観光開発には、経済効果に加え、住民の誇りの醸成やアイデンティティの再認識を期待することができる。発展途上国においても、その豊かな自然や固有の文化をいかした観光開発が試みられている。しかし、技術や経験、人的資源が不足している国々にとって、その試みを地域の発展に結実させることは難しい。さらには、地域住民の関与なきままに進められる外発的な観光開発や、利潤追求に偏重した「人間不在の観光開発」が、地域の伝統的な文化の変質や地域住民の絆の弱化を招く危険性までも有するのである。

 そうした危険を回避し、「人間不在の観光開発」を克服するためには、まず地域住民自身が、損なわれてはならない地域の価値を認識することが重要であると私は考える。それも、地域住民の生活から生み出され、それと一体となって現在まで存続してきた遺産を評価することにより、地域住民の存在を遺産価値に位置づけることが必要である。そのような価値付けは、単なる自然や建造物などの特性を評価したものとは異なり、地域住民自身がその価値の創造主体であり、継承主体であることを明確にするからである。そのようにして価値が認識されて初めて、その価値とともに住民の生活を発展させるような遺産および観光マネジメントに対する指針が得られ、解決すべき課題も明確になる。

 途上国における様々な地域は、当然日本とは異なったコンテクストを有する。そのため、日本で行われている方法をそのまま適用しようとしても破綻を招くのみである。しかし、日本が培ってきた遺産マネジメントの理念や目的、方法を選択する際の考え方といった根幹的な部分を共有しつつ、支援することは可能であると考える。

 フィールドワークによる実践的な研究を通じ、学院の多くの仲間とともに知恵を出し合い、切磋琢磨しつつ、世界のある地域の人々が少しでもより幸せになったと感じることができるような国際協力を推進できることを心から願っている。

 

八百板 季穂 Kiho Yaoita
担当分野/文化遺産マネジメント、観光開発国際協力

 

神戸市出身。九州大学大学院芸術工学府修士課程を修了、修士(芸術工学)を取得。北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士後期課程を修了、学位論文『発展途上国における都市遺産観光開発に関する研究』を執筆。博士(観光学)。フィジー諸島共和国やエチオピア連邦民主共和国を中心に、日本の技術と経験をいかした国際協力を展開中。

 

日本の文化遺産まちづくりを観光開発国際協力の舞台へ
 

 私はこれまで山口県萩市をフィールドに、住民と協力して地域の“おたから”を発見し、それを地域の資源として価値付け、まちづくりに生かすことに取り組んできました。地域住民と相談しながらまちめぐりマップを作成したり、古い民家の蔵の民具を引っ張り出してカルテ化するというような作業に没頭する中で、住む人にとっては当たり前のものでも外の人には珍しかったり、逆に専門家では気づかない、住民の目だから発見できるものもたくさんあることに気付きました。私の研究は、そうして拾い上げた“おたから”をどうすれば訪問者に分かりやすく、住民が解説しやすい物語=ストーリーに組み立てられるかを探求することです。
 通っている萩の浜崎地区も「港で栄えた商家町」という物語で説明されています。この物語を説明するために住民がぜひとも見て欲しいと思う“おたから”は、指定文化財のような立派なものばかりでは決してありません。例えば、蔵から引っ張り出してきたオンボロな双眼鏡(右側の写真左上参照)でも、ある物語を説明するのに必要であればそれを上手に活用します。つまり、地域にある全ての資源をフルに、そして有効に使う方法を模索することが研究になるのです。
 私のもう一つの研究テーマは観光まちづくりの国際協力です。こうした実践のなかから生まれてくるまちづくりの手法をモデル化し、これを文化も慣習も宗教も全く違う中東ヨルダンのサルトという歴史的な町並みに技術移転してきました。家々を一軒一軒訪ね歩き、建物へ入り、ヒアリング、スケッチ、写真撮影を行ない、それらをデータベース化しました。この調査によって多くの住民が自分の家の価値に初めて気付き、そして「それなら隣のあの家も」と別の家を紹介してくれることで、最終的には約1,000軒もの歴史的建造物を発見できました。
 このような、博物館から飛び出した学芸員が地域を活気づけるような活動は、日本国内だけでなく国際社会においても求められています。ぜひ皆さんも、私と一緒に世界を駆け回っていろんな地域の魅力を再発見しませんか?

  村上佳代

村上 佳代 Kayo Murakami

担当分野/文化資源マネジメント論

  東北芸術工科大学芸術学部歴史遺産学科卒、九州大学大学院芸術工学府芸術工学専攻環境・遺産デザインコース修了。博士(芸術工学)。3期、延べ1年半に亘り独立行政法人国際協力機構(JICA)青年海外協力隊員としてヨルダンハシミテ王国サルト市への国際協力事業を実践。前職は、特定非営利法人「NPO萩まちじゅう博物館」学術アドバイザーとして文化資源マネジメントの取り組みに関わる。
 

念彼観光力疾走
 日本が戦後の荒廃から復興し、高度成長期を経ていくにつれて観光の大衆化が起こりました。これにより観光の楽しさを多くの日本人が味わえるようになりましたが、同時にまた「どこの旅館も似たりよったりの料理」「上げ底の土産物」「有名スポットを駆け足で見て回るだけのツアー」「無秩序な観光開発」などに象徴されるような、観光の負の側面も顕著になりました。こうした弊害がもたさられた原因のひとつに、観光をする側は観光をたんなる「気晴らし」としてしかとらえず、観光者を受け入れる側は観光の「経済効果」にばかり目が行ってしまったということがあげられます。
 しかし、こんにちでは、そうした観光のとらえ方に対する反省と変化が起こっています。観光者は個性化・多様化し、そこでしか体験できないことにこだわるようになり、うわべだけの観光施設を敬遠するようになってきています。また地域の側も、地域文化に根ざした観光資源の提供や訪問者との交流を重視するようになり、「地域づくり」というトータルな構想において「観光振興」をとらえるようになってきています。このためには、地域マネジメントや文化デザインも視野に入れて「観光」を考えることが必要になります。

 さらに今後は、世界的な大交流時代への対応も課題です。これまで日本は、外国からのお客様を迎えることはあまり得意ではありませんでしたが、これからは積極的な受け入れが求められるようになります。そのためには「異文化交流」や「ホスピタリティ」に対する感覚も醸成・洗練されていかなければなりません。
このように、観光に対する意識が変わり、観光のもたらすものがなにかが改めて問われている中で、様々な可能性への模索と実践が各地で行われています。いわば「新たな観光の創造」が日本全体を挙げて進められているのです。
 「念彼観光力疾走」とは私の造語で、「観光の力を念じつつ、その発展に向かって進んでいく」という意味です。では「観光の力」とはなにか。ひとことで言えば、それはまず人と場所、ゲストとホストとを結びつける力です。そしてその力は、人々に活力を与えたり、自己の再発見をもたらしたり、地域の魅力を示すきっかけになったり、ネットワークの形成を導いたり、文化の創造を引き出したりといった様々な効果を生む源でもあります。こうした「観光が持っているパワー」に大きな期待を込めながら、ゲストとホストが共に幸せになる観光を探っていくのが観光学高等研究センターの大きな役割です。私も微力ながらこれに貢献できればと願っております。

  松本秀人

松本 秀人 Hideto Matsumoto

担当分野/学術研究員

 

図書館情報大学図書館情報学部を卒業後、出版社勤務を経て、北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院修士課程修了。2010年4月より観光学高等研究センター学術研究員。「観光と図書館の融合」をメインテーマにしつつ、観光系大学の現状やカリキュラム構成なども研究。

 


兼務教員 大学院メディア・コミュニケーション研究院所属

  髙橋吉文 Yoshifumi Takahashi
担当分野/国際文化形成論

  山田義裕 Yoshihiro Yamada
担当分野/国際言語コミュニケーション論

  清水賢一郎 Kenichirou Shimizu
担当分野/中国地域文化論

  宮下雅年 Masatoshi Miyashita
担当分野/北米地域文化論
  西川克之 Katsuyuki Nishikawa
担当分野/欧州地域文化論
 

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